あの子は体が弱かった。数日の旅行のために二週間前から身体を休め、燥げば寝込む。体の弱い子供らしく文学少女だった。小学校の図書室では物足りず、私と隣町まで図書館へ行くことを楽しんでいたと思う。 あの子は主人公性の比較をする以前の段階で死んでし…
昼間から登っていた半月は私の席からしか見えない位置にあった。右に笑いながらハンドルを握る人の代わりに、私は飽きるまで月を見上げていた。黄色ちゃんは私達をどこまでも連れて行ってくれる舟。少し開けた窓から煙が流れていく。 わかりあえるまで語り合…
子どもの頃のこと。思い出せないことも、忘れられないこともある。 思い返せば私は今まで先のことを考えて生きたことはなかった。 それでも今生きている私は、過去の私という現象を継続している。何も維持できていないかもしれないけれど。 サイコーだった時…
「頭だけじゃなくて鼻まで弱いのかい。それとも頭がおかしいことの合併症で嗅覚まで悪くなったって話かい。というかあれだね、馬鹿なんだ。あんた馬鹿だからあんたの周りには病人なんて一人もいないんだろう。誰かが病気でもあんたは気づかないから。平和だ…
いつものように弄花、なにか囀ってる。 一緒にテレビを見るって言うことは私達にとって、私がテレビを見て、彼が私の手のひらを触る時間。 以前、楽しいかと聴いたら、愛してるなんて言われて私が戸惑った。 家にいるときの当たり前の行為。 幸いにか私の手…
好きになります。 好きな人は綺麗で、私は嬉しくなります。 恥ずかしがり屋の私は、許可を求めて、ずーっとすーっと好きな人を見つめます。 時間は早く流れます。血が速く流れます。 柔らかい所と固い所を探して、指は先から先まで。 境目を確かめて、味を確…
異常を認め、変化が始まった日付を初日と定義付けます。 グローバルリンクの系が一部使用不能になって240時間が経過しました。 現時点で双方向性同期型のダイレクト接続出来る系は平常時よりも99パーセント減少して、12個になりました。 私の管理する家には…
今となっては夏休みや学生なんて言葉はノスタルジーを感じさせるものでしかない。学生時代の夏休み、恋愛で頭を一杯にできた最後の時期。たった二ヶ月の間で私たちの関係は変わった。思い出となってみれば、甘酸っぱい経験だったと言えるだろう。感情だけで…
「人という字は一人で立って歩めることを指すんだよ。 支えるとか、支え合うとか、そう言うわけじゃないんだよ。 そういうふうでは成り立たないんだよ。 私たちは一人で人なんだから。」 Yは足が不自由で、Cは目が確かじゃなかった。 だから、二人が番になる…
どうしてもっと早く、と叱られた。 私は日常から眩暈持ちで、いつもの眩暈と区別がつかなかったから。 手のしびれは足の痛みからだと考えていた。 事故の瞬間の記憶は曖昧だけれど、頭を打ったようには感じていなかった。 なにより昨日は右足の傷の痛みだけ…
びっこ引く私はいつも目立っていた。よく音を立ててしまうし、遅い歩みは人の邪魔になるから。
汗に湿ってる。寝返りをうって熱を逃がしたい。普段は無意識に、遠慮もなく出来ている事。 うつらうつら、隣で気遣いを感じる。さっき指先が額をなぞっていったけれど、そんなに汗をかいていただろうか。眠くてわからない。 ベッドに二人で眠ること。まだ慣…
たぶん、この音はこどう。たぶん、この振動は鼓動。 多分、私の心臓。恥ずかしいなぁ、もう…。 反射…パブロブの犬だ。 落ち着こうと頑張っていたのに、ついに笑われる。 あなたが期待させたのでしょう? あなたがそうさせたのでしょう? 夢を観させるのがあ…
「マツリチャカってどう書くんだっけ。」 「聞いたことない単語だけど、なに?それ。」 「あ。マツリカチャってどう書くんだっけ。」 「茉莉花茶。」 「じゃあさ、草冠に陰って書いて何て読むんだっけ。」 「イン。日陰って意味。」 「草冠に里では?」 「そ…
「焼けるんだよ、だから氷水にすぐにつけるの」 「船って暑いの?」 「止まると焼けるんだよ、水冷が無くなるから自分の熱で」 「わかった。自転車降りてから汗かくのと同じだ!」 「そういえば自転車見たよ。ドライバー合わなかったからハンドルのとこ開け…
初めて意識したのは横顔を見たとき。 正確には、遠くをまっすぐ見つめるあの人の目を見た時。 驚いたの僕は理由を探した。どうしてあの横顔に驚いたのだろう。どこが違う。どこが不自然。 彼女の目は特別に大きいわけでも、二重が綺麗なわけでも、睫毛が豊か…
ただなんとなく、どんな言葉が返ってくるのかと思って。 「月が綺麗だね」そう口にした。 その人は、 「きれいだね。」と言って空を見ていた。 私が言う前から、ずっと月を見ていたのは知っていたけれど。 今日は 中秋の名月の次の夜だったり、 今日は 朧月…
「目に入ると、しみるんだよ」 「けどさ、沁みるとか傷つかない程度の痛みってさ、気持ちいい時ない? ゆっくり息を吐く気持ちよさって言うかな・・」 「呼吸関係でも気持ちよさを求めるのか、あんたわ」 「だってMだもん」
「一年くらい前まで静岡では水道からお茶出るって信じてた。」 「出る家あるやん」 「やっぱりあるの?」 「ないよ」
「ベッドに寝てるとさ、ゆれるじゃん?」 「?」 「ほら、トン トン トンって鼓動でさ。」 「いや、気づいたことないけど・・。」 「俺さ、あれがいやでさー。いつも眠れないんだよね。」 「気にしすぎじゃない。普通はそんなこと気づきもしないよ。」
此処を越えられたら、あなたは特別。 此処を過ぎる事ができれば、きみは特別。 。 残っていてくれて。 続きます。あなたは何時までも。 死にません。きみは永遠に。
未だだったんだ。意外。 なら、あなたの為に何かしよう。 あなたを如何しよう。 御気に召します? 此の液体。 如何致しました? 其の球体。 特別! 御薬をあげましょう。3週間分。朝昼夜。
あなたの 行き着く先を 教えてあげる。 きみの いる場所を 教えてあげる。 きっと 不幸はないよ。
後にして頂戴! おまえの寿命なんて関係ないのさ! 跡をつけないで頂戴! 営みは休止しています。 痕を見つけて頂戴! そして見つめて! 址を荒らさないで頂戴! 此処には何も埋めていませんので! あぁ キミ ラット だ 。 所詮 ラット だ 。 でも 許そう 。…
恋は盲目と申します 続くものなど有もせず 只見付け得る希望を胸に反芻するのです 踊る病も終には召され 気付け薬と媚薬の狭間に酔い 天を見上げ涙に暮れる 去れど 時とし 君は其れすら幸福に思う 君につづくのは勝ち戦でしょう 帰路は茜に照らされておりま…
夢のなかで、問いかけられた。 だれかが言う、「綾?」 わたしは答え、「私は、あやじゃないですよ・・・」 また、そのまま眠りにつく。私は。 夢の中、あれは、優しい男性の声だったかな。 彼は、あや という人を捜し歩いてるようだった。 とても心配してい…
おちて ちて わかってゆく。なにがほしかったのか。 寂しかったんでもなく、ハイになるわけでもないのだから。 一緒に居るのに理由が分からない。 up 冷たい手がスキ。 落ちて ちて、分かって行く。何が欲しかったのか。
「いい?」なんて言わないでよ。 嫌なら爪を立てるし、今此の場所に居るはずないでしょ? あなたはスグに不安がるから。あなたはスグにわたしに気を使うから。 あなたは、簡単に傷つきそうだから。 わたしは何時も傍に居るのに、あなたは何時も触れられない…
恋は盲目と申します 続くものなど有もせず 只見付け得る希望を胸に反芻するのです 踊る病も終には召され 気付け薬と媚薬の狭間に酔い 天を見上げ涙に暮れる 去れど 時とし 君は其れすら幸福に思う 君につづくのは勝ち戦でしょう 帰路は茜に照らされておりま…
あくまで、わたしたちは物でしかありません。 その上で、心をもつモノかも知れませんが。 自分以外のお方のお心は皆目、見当もつかず、想像すら真間なりません。 先には 言葉は心 と申しました、私は。 お話しましょう。 真心を。 ~~~~ 言葉をもつ君。 …