ただなんとなく、どんな言葉が返ってくるのかと思って。
「月が綺麗だね」そう口にした。
その人は、
「きれいだね。」と言って空を見ていた。
私が言う前から、ずっと月を見ていたのは知っていたけれど。
今日は 中秋の名月の次の夜だったり、
今日は 朧月だったり。
今日は 満月だったり。
雨が一粒 二粒腕に感じていたり、
その人は月がすきだったり、
月を見ながら ずっと何かを考えていたり。
そういったことを私は知ってたけれど、その人の返事は単純に、私の言葉を繰り返しただけだった。
言葉を反芻した後、私は満足して、
月と、月を見ている人を見ていた。