びっこ引く私はいつも目立っていた。よく音を立ててしまうし、遅い歩みは人の邪魔になるから。
姿勢の悪い私は背が低いように見られた。小さくなりたかったので其れは好都合だった。165cm 短い黒い髪。半袖は着た事が無かった。
図書館で本を読みながら背を正していれば別の意思で人の視線を貰うのも知っていた。整った顔をしているのを自覚していた。席を立って、私の動きを見て引く人の心もわかった。
手を貸してくれる人は沢山いて、慣れて感謝を忘れそうになるほどだった。
多くの手の中で私が取るのは4人ほどの手だった。3人は私の家族だった。
一人、手を貸してくれたある人。歩く相性があった。手の相性だったかもしれない。驚くほどに楽に歩けるようになる手。
恋に落ちるかと思った。その人と時間を共にできるようにと、私の生活は小さなところから見直されたりした。
惚れてくれればいいな、等と思って 同姓の友達にそう話したこともあった。
2年、よく手を取ってもらった。
付き合って、何ヶ月だったかな……飽きて別れた。
別れた後は気まずくて、手を取ってもらうなんて出来なかった。
一時だったけれど番いの真似をしてわかった事が沢山あった。わかった事から考えなきゃいけない事が沢山あった。
弱い個体が生きている矛盾に気づいて、無視すると結論がでた。
涙が武器、という言葉の意味に気づいて、反吐が出た。
身体を重ねる事に逃げる気持ちを理解して、嫌な視野が広がった気がした。
もっと、美人に生まれればよかった。