初めて意識したのは横顔を見たとき。
正確には、遠くをまっすぐ見つめるあの人の目を見た時。
驚いたの僕は理由を探した。どうしてあの横顔に驚いたのだろう。どこが違う。どこが不自然。
彼女の目は特別に大きいわけでも、二重が綺麗なわけでも、睫毛が豊かなわけでもなかった。ただただ、見つめる視線に驚いたとしか言い様がなかった。
じっと見ていたから、目が合う。
目に焦点が合って、周りが薄らぐほどに。一瞬とらわれて、すぐに軽く会釈を交わして視線を流す。
それから彼女を見てしまうようになった。
相手に悟られずに見る、というのは難しい。特に相手の瞳を見ようとすればすぐにでも視線がばれる。
気付いたのは瞳の大きさ。黒目が少し小さいこと。
正面から見つめると 上目遣いのような視線を相手に感じさせる目だった。
調べると そういった目の名前を見つけた。言葉の概念。
特別な形質。個性レベルでしかないけれど。
「人相学では最悪の相として『凶相』に分類されている。
人相の悪さや、鋭い きつい印象を与えることがある。
男女問わず独特の色気を醸す要素として、好意的に評されることもある。」
彼女のイメージと重ねてみる。言葉に出来なかった感覚、印象の言語化が辞典によってなされる。最悪の相・・・最悪という言葉が口語ではないんだと思って少し可笑しくなる。
それから、彼女のことを考えた。あの人はこの言葉を知ってるのだろうかと。
それ以前、自分の目のことに気付いているのだろうか。
そして、周りの人たちは。
・・・。
きっと知っているだろう。自分のこと、当然。
どう思ってるんだろう。気にするほどのものではないのかもしれない。
どう思ってるんだろう。
しばらくして、僕が彼女の目ではなく彼女を特別視しているだけだと気付いた。
それから、人に会うと目を見てしまうクセがついてしまった。