徒花外連味

ともの2。 TOMO's since 2005

「函南友子が新しい茶飲み友達を得る」

 小春の日差しの中、公園のベンチに座っていた私は、手にした本のページをめくる。穏やかな時間を流している。風が心地よかった。静かな公園には、たまに人が通り過ぎるだけだった。様様な人人の暮らしの音が遠く滲んで合わさっていて、この日もその雰囲気に浸っていた。
 そんな中、私の前を通り過ぎる二人組に目を留めた。まるで普通に、軽快な足取りで歩く姿に、私は瞬時驚愕する。その二人、片方は昔のひとの結城知恵だった。
 勇気をだそうと思う。声を掛ける。上ずっていたかもしれない。
「お久しぶりですね。あの、調子はどうですか?」というようなことを言ったと思う。
「最近は良いよ。」と、知恵は答える。もう笑顔である。
 私も微笑み返す。知恵は、今は視力がほとんど無いことを話し、私は心配そうに彼女を見つめた。しかし、知恵の何となしな所作、新しい生活に慣れているようだった。
もう一人は知恵の幼なじみで函南友子と言うらしい。友子も加え、私達はたくさん話しをした。友子は珈琲と単車と写真機を趣味としているらしく、その趣味に熱中している様子だった。私も珈琲は好きだが、友子が言うような蘊蓄はない。一方で、知恵は昔と変わらず穏やかな表情で話を聞いてくれた。
 時間は過ぎ、公園も徐々に人が少なくなっていく中、私たちは話しは続く。友子は自分が働いていないことを軽く口にする。
「私、今は働いてないんだ。でも、浪費家っていうのも良いなって思って。」
 私は友子の考え方が信じられなくって、彼女の好機の向きの輝きのようなものを訝しむ。
 知恵が口を開いた。「友子は昔から本が好きだったよ。私たちが学生の頃も、友子が読んでいる本を借りたりしてたな。」
言われる分に友子は気恥ずかしそうにしていたが、私は友子が読書家だということを知り、彼女との会話に更に興味を持った。
「小説でも何でも、本をやってると、別の世界に浸れるから好き。私が経験したことがない世界、知らない世界は存在していたんだって信じられる。」
 柔らかい友子の語り口からは、本に耽るのが好きなことが伝わってきた。図書館の近いこの公園は、彼女の縄張りなのかもしれない。
 やがて、日が暮れる時間になり、私たちは別れることになった。友子は、「また会おうね。今度は私が珈琲を淹れてあげるから」と言って笑顔で手を振ってくれた。
 帰り道、私は友子の言葉を思い出した。「浪費家っていうのも良いなって思って。」印象的だった。私自身にも当て嵌めてみよう。

 

 *わたしについて。

Author:Torno Kuyomo Reico
ともです。

江国湖畔に住んでいます。イタチ飼いでした。
嗜む程度に莨と珈琲依存。趣味は繰り返すこと。好きな人や物が多すぎたはずなのに、思い出せないのだわ。

風にあたると風邪を引く。





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