徒花外連味

ともの2。 TOMO's since 2005

「You were there」

霧の城の景色は私の目に焼き付いていて、その、差し込む日差しも、影でさえ、美しかった。
二人座った椅子は古い石で出来ていて、微睡みそうな心地よい木木を通る風の音に、私は癒やされたの。
きっと、私の心の奥底に記憶されているのだろう。
最後にあの子は、”ありがとう”と言った。回廊響くそれとは違う、小さい声。言葉。
私もあの子に、”ありがとう”って、そう伝えたの。伝えられたの。絶望した、あの岸で。
あの子を忘れない。あの子だけは忘れない。

ずっと夢の中にいるみたいだった。それでも確かに感じていて、私は、ずっと、あの子の事を忘れないようにって、そう思っていた。
私は眠るたびにあの子に出会い、都度に約束をするのだろう。

私は印の付いた子供で、あの子は籠の子供だった。
あの時間は、音楽のようだった。
あの時間は、輝く金で、私の中の一番大切な思い出。
あの子を忘れたくなくって。あの子のことだけは忘れたくなくって。

それまではずっと悲しかったのに、繋いだ手は熱くって、朝日を浴びるようで。
あの子を、もう、忘れない。白くて煩わしさのない景色。
あの子を守りたいって気持ちだけだった。

あの城は美しかったのだ。光も影も、美しかったのだ。
まだ風は吹いているだろうか。もう誰も知ることのない、あの島を。
 *わたしについて。

Author:Torno Kuyomo Reico
ともです。

江国湖畔に住んでいます。イタチ飼いでした。
嗜む程度に莨と珈琲依存。趣味は繰り返すこと。好きな人や物が多すぎたはずなのに、思い出せないのだわ。

風にあたると風邪を引く。





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